甲が持つポテンシャル

手の指を開いてください。
そう伝えると多くの人は指を反るような動作を行います。
なぜそうなってしまうかと言うと、
『指には指を開く筋肉がついていないから』です。
指を開く外転筋群は手の甲のサイドに存在します。
つまり指を開くと言うのは、手の甲を開くと言うのが正解になります。


手の甲にある外転筋群(小母指外転筋、長母指外転筋、背側骨間筋など)は
骨を支えるインナーマッスルの部類に入ると思いますが、
アナトミートレイン的にみると
インナーマッスルの筋膜連動が起こりますので、手の甲を開こうとすると

手首も肘も肩も骨に近いところで適度な力が入り関節が安定したのが感じられます。イメージとしては弓のしなりと言う感じです。

では逆に

指に意識を持ってきて指を反らす筋肉(小母指伸筋や長母指伸筋、総指伸筋など)はアウターマッスルに分類されますので関節を大きく動かしてくれますが、骨の安定性には欠けますので、
手首や肘や肩は緩く動きすぎる傾向になります。
イメージとしてはヌンチャクの暴れ方です。
一昔前のギャルポーズがまさにそれです。

猿手であったり腱鞘炎であったりルーズショルダーであったり。

例えば、パソコンを手の甲を開いてタイピングするのと、指だけを動かしてタイピングするのとでは随分と身体に及ぼす影響が異なります。

美しいかつ安定して動かす方法は、

『手の甲を開いた状態で指を動かして生活する。』です。

練習方法は、

1、人差し指の甲の側面、小指の甲の側面、母指の甲の側面に
逆の指を当て、押し返すように甲を開く練習をする。

手の甲を開く

指を反ると皺が増え関節が緩くなる。

2、手の甲を開いたまま、
母指と他の4指を順番に指の腹を合わせる練習をする。
このとき指先は反らず、一番遠くの軌道を通るようにする。
出来ていると手の甲の皺が減る。
上半身の骨に近いところに力がみなぎる感じがする。

手の甲を開く。指は反らない。

手の甲を開いたまま一番遠くで指の腹を合わせる。

母指と他の4指が一番遠くで合流すると母指に4指とも触れられるのが理想

3、その手を使って日常を生活する練習をする。

先日、坂本龍一さんが亡くなられる少し前に撮影された映画『Opus』を
拝見してきましたが、晩年の坂本龍一さんの手は指を動かすと言うより手の甲を開いて指を置きにいく。と言う表現があっている。

だから演奏している坂本さんの身体は稲穂のように垂れているけれども身体の中は弓のように力強くしなっていました。と言うのが木村の視点的観測。

もちろん足の甲もあるのだけれどそれはまた別の機会に。

『上半身の所作の美しさは手の甲に宿る』

木村祐介






Previous
Previous

手の指で変わる身体

Next
Next

街中で振り向かれるヒト・埋もれるヒト Vol.7